妊婦さんがアデノウイルスに感染した場合、多くは風邪のような症状で自然に回復しますが、稀に合併症を引き起こす可能性も考慮しておく必要があります。妊娠中は免疫力が低下しやすいため、普段よりも感染症が重症化しやすい傾向があるためです。まず、アデノウイルスの型によっては、肺炎を引き起こすことがあります。特に、高熱が続き、咳がひどく、呼吸が苦しいといった症状が現れた場合は、肺炎を合併している可能性が考えられます。妊娠中の肺炎は、母体にも胎児にも負担が大きいため、早期の診断と適切な治療が必要です。次に、中耳炎や副鼻腔炎といった、耳や鼻の合併症も起こり得ます。アデノウイルスによる喉の炎症が、耳管を通じて中耳に波及したり、鼻の奥にある副鼻腔に炎症が広がったりすることがあります。耳の痛みや聞こえにくさ、膿性の鼻水、頭痛といった症状が現れた場合は、耳鼻咽喉科の受診も検討しましょう。また、非常に稀ではありますが、アデノウイルスが心臓に影響を与え、心筋炎を引き起こす可能性も報告されています。胸の痛みや動悸、息切れ、不整脈といった症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。さらに、アデノウイルス感染症の経過中に、細菌による二次感染を起こすこともあります。例えば、喉の炎症が悪化して細菌性扁桃炎になったり、皮膚の発疹を掻き壊して細菌感染を起こしたりするケースです。これらの場合は、抗菌薬による治療が必要となります。これらの合併症は、いずれも頻度が高いものではありませんが、万が一の可能性として知っておくことが大切です。妊娠中にアデノウイルス感染症が疑われる症状が現れた場合は、自己判断せずに、まずはかかりつけの産婦人科医に相談し、指示を仰ぎましょう。そして、治療中も体調の変化に注意を払い、もし普段と違う強い症状や、気になる症状が現れた場合は、速やかに医師に伝えるようにしてください。