過眠症治療薬物療法と非薬物療法


過眠症の治療は、その原因やタイプによって異なりますが、大きく分けて「薬物療法」と「非薬物療法」があります。これらの治療法を、医師の指導のもと、患者さんの状態に合わせて適切に組み合わせていくことが、症状の改善には重要です。まず、薬物療法ですが、これは主にナルコレプシーや特発性過眠症といった中枢性の過眠症に対して行われます。代表的な薬剤としては、中枢神経刺激薬(モディオダールなど)があります。これらの薬剤は、脳の覚醒中枢に作用し、日中の眠気を軽減する効果があります。また、ナルコレプシーに見られる情動脱力発作(カタプレキシー)に対しては、抗うつ薬の一部(SSRIやSNRIなど)や、γ-ヒドロキシ酪酸ナトリウム(ザイレム)といった薬剤が用いられることがあります。睡眠時無呼吸症候群が原因の過眠に対しては、CPAP療法が第一選択となりますが、それでも眠気が残る場合には、補助的に中枢神経刺激薬が処方されることもあります。むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害による睡眠不足からの過眠に対しては、ドパミン作動薬や、鉄欠乏が原因の場合は鉄剤などが用いられます。これらの薬物療法は、医師の厳密な管理のもとで行われ、効果や副作用を定期的にチェックしながら、薬剤の種類や量を調整していく必要があります。次に、非薬物療法です。これは、全てのタイプの過眠症において重要な役割を果たします。代表的なものに、睡眠衛生指導があります。規則正しい睡眠覚醒リズムを確立するための指導(毎日同じ時間に寝起きする、寝る前のカフェインやアルコールを避ける、寝室の環境を整えるなど)が行われます。また、計画的な昼寝(仮眠)も、日中の眠気をコントロールするのに有効な場合があります。特にナルコレプシーの患者さんには推奨されることが多いです。光療法も、睡眠覚醒リズムを整えるのに役立つことがあります。さらに、ストレスや生活習慣の乱れが過眠に関与している場合には、カウンセリングや認知行動療法といった心理療法的なアプローチが有効なこともあります。薬物療法と非薬物療法をバランス良く組み合わせ、根気強く治療に取り組むことが、過眠症の克服への道となります。