「両親ともに花粉症ではないから、自分も花粉症にはならないだろう」あるいは逆に、「親が花粉症だから、自分もいつか発症するのでは…」と、花粉症と遺伝の関係について気になる方も多いでしょう。結論から言うと、花粉症そのものが直接遺伝するわけではありませんが、アレルギー反応を起こしやすい体質(アレルギー素因)は遺伝する傾向があると考えられています。アレルギー素因とは、特定の抗原(アレルゲン)に対して、IgE抗体というアレルギー反応に関わる抗体を作りやすい体質のことです。このIgE抗体を作りやすいかどうかは、複数の遺伝子が関与しているとされており、親から子へ受け継がれる可能性があります。実際に、両親ともにアレルギー疾患(花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など)を持っている場合、その子供が何らかのアレルギー疾患を発症するリスクは、両親ともにアレルギー疾患がない場合と比較して高くなると言われています。片方の親だけがアレルギー疾患を持っている場合でも、リスクはやや高まります。ただし、アレルギー素因を受け継いだとしても、必ずしも花粉症を発症するわけではありません。花粉症の発症には、遺伝的要因だけでなく、環境要因も大きく関わってきます。例えば、どれだけ多くの花粉に暴露されるか、大気汚染の状況、食生活、ストレス、腸内環境、喫煙習慣といった様々な環境要因が、アレルギーの発症に影響を与えると考えられています。つまり、遺伝的にアレルギーになりやすい体質であったとしても、生活環境や生活習慣に気をつけることで、花粉症の発症を遅らせたり、症状を軽くしたりすることは可能かもしれません。逆に、遺伝的なリスクが低くても、不適切な生活環境や生活習慣が続けば、花粉症を発症する可能性は高まります。遺伝はあくまで一つの要因であり、全てではないということを理解しておくことが大切です。