小さな子供が「お腹が痛い」と訴える姿は、親にとって非常に心配なものです。特に、それが胃のあたり、みぞおちの周辺を指している場合、何科に連れて行けばよいのか、迷ってしまうかもしれません。大人の胃痛とは異なり、子供の腹痛には、特有の病気や心理的な要因が隠れていることも多く、適切な診療科を選ぶことが重要です。結論から言うと、小学生以下のお子さんが胃の痛みを訴えた場合に、最初に受診すべき診療科は、迷わず「小児科」です。小児科医は、子供の体の成長・発達の過程を熟知しており、大人とは異なる子供特有の病気の知識と診断経験が豊富です。胃の痛みという症状だけでなく、顔色や機嫌、食欲、他に症状はないかといった、子供の全身の状態を総合的に診て、考えられる原因を幅広く探ってくれます。子供の胃痛で最も多い原因の一つが、「急性胃腸炎」です。ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)や、細菌の感染によって、胃腸に炎症が起こるもので、胃痛に加えて、嘔吐や下痢、発熱を伴うことがほとんどです。小児科医は、脱水症状の評価と、その対処のエキスパートであり、適切な水分補給の指導や、必要であれば点滴などの処置を行ってくれます。また、子供特有の病気として注意が必要なのが、「急性虫垂炎(盲腸)」や「腸重積」といった、緊急手術が必要となる外科的な病気です。これらの病気は、初期症状としてみぞおちの痛みを訴えることがあり、見逃すと危険です。小児科医は、常にこれらの重篤な病気の可能性を念頭に置きながら診察を行い、疑いがあれば速やかに小児外科のある病院へ紹介してくれます。さらに、子供の胃痛の原因として、非常に多いのが「心因性」のものです。学校での友人関係の悩みや、勉強のプレッシャー、家庭内の環境の変化といった「ストレス」が、自律神経のバランスを崩し、胃痛や腹痛として現れることがあります。これを「反復性腹痛」と呼びます。小児科医は、このような心理的な背景にも配慮し、子供の心と体の両面からアプローチしてくれます。もし、症状が慢性化し、胃カメラなどの専門的な検査が必要だと判断された場合は、小児科から「小児消化器科」のある専門病院へ紹介されることもあります。まずは、子供の総合医であるかかりつけの小児科を信頼し、相談すること。それが、お子さんの痛みの原因を突き止め、安心を得るための、最も確実な第一歩です。